診療所

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 明け方、自分の叫び声に驚いて飛び起きた。  竹馬の友が、野獣らしきものに喰いちぎられるという、なんとも(おぞ)ましい(ビジョン)(うな)されたからだ。  リアルな友の最期にどっぷり疲れ果てた私は、暗闇の中で躰を起こすと、ベッドの縁に腰掛けた。サイドテーブルに置いてあるミネラルウォーターに手を伸ばし、喉を鳴らしながら水を飲んだ。  久しぶりに煙草の香りが恋しいと思った。タンスの中の、上着の内ポケットにライターと煙草を一箱残している。  モロー曰く『君は吸いたきゃ、いつだって吸ったらいいんだ。。ただそれだけのことさ。ストレスは良くないからね。禁煙は軽く考えるに限る』  心療内科の友人はヘビースモーカーだった私に、その気になればいつでも吸えるという安心感を与えた。()わば、お守り代わりに持っていた煙草を、モローの奇妙な夢をきっかけにして、思い出したというわけだ。  だが、ここまで煙草を断っているのだから、今回もやめにしようと考えた。  不意に階下で電話の呼び鈴が鳴った。まだ夜が明けたばかりだというのに、この時間の呼び出しは急患の可能性が高い。私はガウンを羽織ると、急ぎ階段を駆け降りた。
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