桜の花のように

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「うまい」 「ありがとう」 毎回料理をほめてくれる恋人に頬が緩む。 失敗した時だって、まずいなんて言われたことは無かった。どこまでも優しい、というか甘い恋人に私は救われていた。 穏やかな朝。ゆったりとした時間を過ごして、仕事に行く恋人を見送る。 「今日は帰りが遅くなるから、夕飯はいいよ」 「わかった、気をつけてね」 「うん、いってきます」 「いってらっしゃい」 見送ってから、片付けをして自分も仕事に行く準備をする。 元々就職はしておらず、アルバイトやパートで生活していた。所謂フリーターである。 同棲を初めてからは、昼頃からのシフトにしているため朝はゆっくり出来る。 メイクをして、髪をセットして、可愛い服を着る。 「よし、今日も可愛い!」 鏡の前で、思わず笑顔になる。 準備を終えると、丁度いい時間。 「いってきます」 玄関を出ると、春の暖かい日差し。 「今日もいい天気!」 彼が好きだと言ってくれた笑顔を大切に、今日も一日頑張ろうと意気込む。 ──────────あれから10年、まだ、気づけばあなたを探しています。
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