0人が本棚に入れています
本棚に追加
「うまい」
「ありがとう」
毎回料理をほめてくれる恋人に頬が緩む。
失敗した時だって、まずいなんて言われたことは無かった。どこまでも優しい、というか甘い恋人に私は救われていた。
穏やかな朝。ゆったりとした時間を過ごして、仕事に行く恋人を見送る。
「今日は帰りが遅くなるから、夕飯はいいよ」
「わかった、気をつけてね」
「うん、いってきます」
「いってらっしゃい」
見送ってから、片付けをして自分も仕事に行く準備をする。
元々就職はしておらず、アルバイトやパートで生活していた。所謂フリーターである。
同棲を初めてからは、昼頃からのシフトにしているため朝はゆっくり出来る。
メイクをして、髪をセットして、可愛い服を着る。
「よし、今日も可愛い!」
鏡の前で、思わず笑顔になる。
準備を終えると、丁度いい時間。
「いってきます」
玄関を出ると、春の暖かい日差し。
「今日もいい天気!」
彼が好きだと言ってくれた笑顔を大切に、今日も一日頑張ろうと意気込む。
──────────あれから10年、まだ、気づけばあなたを探しています。
最初のコメントを投稿しよう!