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「じゃあ、また明日」
「うん、また明日ね」
家まで送ってくれた彼の背中に「ありがとう、気をつけてね」と伝えると笑顔で手を振って答えてくれた。
「ただいま~」
「おかえり」
リビングに入ると母が声を弾ませながらそう言い出迎えてくれた。
「今日はお父さん、飲み会でご飯いらないって言うからちょっと奮発してみた」
ふふ、と笑う母と食卓に並ぶ丼に入ったご飯と、色鮮やかなお刺身。
「手巻き寿司?」
「そう、久しぶりに」
「高いお刺身買っちゃった」とうきうきした様子の母。
「ほら、着替えてらっしゃい」
「うん!」
手を洗って部屋に戻って着替えて下に降りると、母は既に椅子に座って待っていた。
「いただきます」
「いただきます」
海苔に酢飯を乗せる。これが意外と難しい。
丁度いい量を乗せないと巻けないし、かと言って少ないとそれもなんか物足りない。
「おいし~!」
「ほんと、高いお刺身買って良かったわ~」
あまりの美味しさに頬が緩む。
もちろん母のご飯は好きだが、たまに食べるこういったものは格別だ。
「あ、次の土曜日ね愛人とお花見行く事になった」
「あら、じゃあお弁当作らなきゃね」
「私が作る!」
「大丈夫なのー?」
力強く言ったが、実を言うと私は余り料理が得意ではない。というか、あんまりしない。だって母がいるんだもの。本当にたまにするお手伝いくらいだ。
「……教えて」
「ふふ、任せなさい」
もう1週間もないが、できる所までは頑張ろう。
もしかしたら当日はほとんど母が作ることになるかもしれないが、それでも一品くらいは作りたい。
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