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可哀想かとも思ったがどうしても欲しかったから、1輪花を摘んでまた学校へと歩き出した。
「なんで僕と付き合ってくれたの?」
突然そんなことを言う彼にどうしたんだろうかと思ったが、なぜだか緊張したような彼に思わず笑ってしまった。
「なんでだろうね、」
「なんだそれ」
摘んだ花を親指と人差し指でつまんで、くるくると回しながらそう言うと、気が抜けたような返事。
どんな言葉を言われると思っていたんだろうか。
「そばにいなきゃって思ったの」
「そばにいなきゃ?」
「そう、この人のそばにいなきゃって」
どういう意味か分からないというような顔の後、微妙な顔をした彼。
きっと、自分がか弱そうだからかとか思っているのだろう。
「この人のそばにいなきゃ、私はダメになるよって事なのか、この人のそばにいて守ってあげなきゃなのかは私にも分からないけど、」
男らしいにこだわる彼のことだから、きっと前者であってほしと思っているのだろう。
「守られるほど弱いつもりはないんだけどなぁ」
「私だって」
少し弱々しい声で言う彼に、私は強気で返した。
でも、彼が守られるほど弱くないことは私にもわかっている。だからといって私は守られるだけなんて嫌だから、2人で守りあえたらそれがいいね。
「そろそろ行こうか」
「うん」
立ち上がった彼に続いて私も立ち上がる。
「あったかいね~」
春の暖かさが心地いい。
「私ね、カーネーションが一番好きなの」
手に持つ花を見て未来を思い描く。
「なんで?」
「だって素敵じゃない?いつか自分の子どもができて、母の日に貰うのが夢!」
出来ればその相手はあなたが良いななんて。
重かったかな?でも、それくらい好き。
彼の手が、私の頬に伸びる。そして、その手はまた私の手を握った。
「僕はね、桔梗の花が好き」
「どうして?」
「花言葉が、好きなんだ」
あまり花言葉は気にしたことがないから、わからなかった。
「そういう風になりたいなって思う」
まっすぐ前を見つめる彼が、どこかに消えてしまうのではないかと言うほど儚くて綺麗で目を奪われた。
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