指輪

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指輪

 フラフラしてるぅ。  朝の6時半、ハルカのお弁当を作る。  力が入らない。  今日は簡単にしよう。  7時半、ハルカが起きてきた。 「パン貰ったあ」 「また、立ったまま食べて!」 「落ち着かないんだもん」 「パンだけでいい、用意するね」  ハルカは急いでトーストを食べて洗面所へ向かった。 「忙しい子ね」  私はちょっと急ぎ気味で朝食を食べた。 「いってきまーす!」  ハルカはにこやかに言った。 「いってらっしゃい」  今日は金曜日。  ハルカは友達の家でお泊まりだ。  私も行く用意をする。  お泊まりセットも用意した。 「ママもお友達の家にお泊まりだよね」 「うん。鍵持つのよ」 「りょ」  夕方、ハルカはお泊まりの用意をしていた。 「2泊してくる」  用意が終わったのか、いそいそとハルカはバッグを持ち、玄関へ向かった。  2泊。  初めてだ。  真司の家で過ごすのは何回目だろうか。  3回目かな。  私は迎えを待った。  ポンとLINE。  着いたよ  私は慌てないように確認してアパートを出た。  3階から降りると真司の車が止まっている。  私は後部座席に荷物を置くと、助手席のドアを開け座った。 「2泊もお泊まり出来るんだって」  真司は、ニヤニヤしている。 「うん。迷惑?」  真司は、私のおでこを指でピンッとはねた。 「バカ。大歓迎さ。俺のこの気持ち分からないかな、姫は」  私はドキドキした。 「さあ、行くよ」  真司は、真顔になり、車を走らせた。   「え?ジュエリー売り場」  伊勢丹のジュエリーショップだ。 「さあ、見てまわろう」  真司は、私の手を取り歩き出した。 「誕生日じゃないわよ?」  私はアワアワと慌てた。 「だから?何買うと思ってんの?鈍いな」 「鈍いって…」  4℃の前で止まった。  真司は店員さんに話しかけている。 「ペアリング欲しいんだけど」  ペアリング⁈  私は止まった、息を呑んだ。 「サラ、どんなのがお好み?」 「へ?」  真司は、クスッと笑った。 「だから、指輪。ほら、見てごらん」  私はオズオズと前へ出た。  安いものは10,000円から。  高いものだと婚約指輪になるほどの物まで。 「これなんていいな」   私は、30,000円代のキラキラした指輪を指さした。 「付けられますか?サイズは?」 「8号」 「お待ちくださいね」  店員さんは、8号を探し出す。 「こちらでございます」  ケースに出してくれる。 「付けてあげる」  真司は、ゆっくりと左の薬指にはめてくれる。 「お似合いでございますよ」  店員さんは。笑顔だ。 「ぼくのもあるかな?16号くらい」 「はい。お待ち下さい」  店員さんは、16号を探し出す。 「こちらでございます」  男性用は、シンプルな作りだ。 「サラ、付けて」  真司は、左手を私の前に出した。 「うん」  私は緊張しながら真司に指輪をしてあげた。 「お似合いでございますね。ペアリングとしては水に強いので付けたままでも大丈夫でございます」  私は自分の指を眺めた。  美しい。 「他のお店はご覧になられましたか?」  店員さんは、優しい声で言った。  真司は、「まだ、これから」と一言。  店員さんは、「こちらの物は一点ものでございます」と購買意欲をそそるような事を言ってきた。 「サラは、どうしたい?」  私はクルクル回るのがあまり好きではない。 「この指輪がいいわ。この指輪がいい」  私にしてははっきりとした声で言った。  真司は、少し口を緩ませた。 「じゃあ、これを」  意味はどんななのだろうか。ただのペアリング?婚約?まさかね。  えー⁈もう買ってくれるの! 「では、頭文字の刻印を」  店員さんの言葉も真司の言葉も見事に消えた。
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