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手作り
「美味しかった」
「だろう?ネタが他と違うんだよ」
「ごちそうさま」
「姫の為ならなんなりと」
真司は、長財布をズボンの後ろポケットにしまった。
「夜は何か作るね」
私は笑顔で言った。
「焼き肉やろうよ、僕は焼くの好きなんだ」
私たちは、車に乗り込んだ。
真司はいつものようにキシリトールのガムをくれた。
「ありがとう」
私は包みを開けて口に入れた。
ガムは普段食べないけど口直しにいい。
黙ったまま、車は走り出した。
いつものように手を絡める。
私は、肩にもたれかかる。
真司は、頭を合わせてスリスリしてくれる。
「甘えたいの」
車は信号で止まった。
「いっぱい甘えて」
真司の手は、私の顎を持ち、クイッと顔の位置まで持ち上げた。
「姫、可愛い顔を見せて」
アルトの綺麗な声が私をキュンとさせた。
私は恥ずかしくなったけど、目を合わせた。
「可愛い」
軽く唇が重なった。
信号が青になり、車は走り出した。
「映画でも観ようか」
「珍しいね」
「ライヤー×ライヤーていうやつ」
私が観たいと思っていた作品だ。
立体駐車場に止め、出入り口に向かった。
駐車したのは3階。
映画館は、6階。
エレベーターで上がる。
土曜日だからやはり混んでいた。
真司は、私をかばうように立っていた。
6階になると意外と人が降りた。
私たちは、手を繋ぎエレベーターを降りた。
鑑賞券売り場は混んでいた。
「まだ、1時間あるから大丈夫だろう」
真司は、財布を出すと会員カードを確かめて財布をしまった。
「サラも会員カード持ってたよな?」
「うん、持ってる」
「洋画じゃないけどいいかな?」
「私、観たかったの。大丈夫」
真司は、びっくりした顔をした。
「へー、洋画ばっかり観るのかと思ってた」
「たまにはね」
私は真司の腕を掴んで寄り添った。
私の頭を撫でている。真司の私への気持ちが伝わるようだった。
「よかったねぇ」
私は泣いていた。
「あーあ、マスクまでビショビョ」
真司は、慌てている。
「マスク持ってるから」
私は涙を拭き、新しいマスクをした。
濡れたマスクはビニール袋に入れて捨てる。
「お手洗い行ってくるね」
「僕も行くよ」
お互いにトイレに消えた。
焼き肉の肉や野菜を買って帰ってきた。
「ただいまあ」
私は自宅に帰ってきたかのように言った。
時間は19時を回っていた。
「サラは少し休むといいよ」
真司は、キッチンで買ってきた食材を並べている。
「手伝うよ」
「いや、姫は泣き疲れたろうから、休んで」
こういう時だけお姫様扱いなんだもん。
私が作るはずだったのに、真司がほとんどやってくれた。
「美味しかったけど」
私はちょっと不満げに言った。
真司は、フフンと得意げに「僕は作りたかったんだよ」
私の出番はない。
次は私の手料理食べさせたい!
強く思うのだった。
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