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会社から15分ほど車を走らせたところに、目的地はあった。
「まじか」
弟は確か茂夫と同じく、普通の会社員。
そこまで稼ぎも、いいというわけではなさげだった。
だから、目の前に聳え立つ、床面積70〜80坪はあろう豪邸を、疑いの眼でしか見ることはできなかった。
恐る恐る、インターホンを鳴らす。
返事はない。
しばらく待ってみたが、うんともすんとも言わない。
玄関のドアノブに手を掛けようとしたとき、中から足音がした。
「やあ」
ひどくくたびれた出立ちの男が出てきた。
顔は土気色、目の下はどす黒く、頬は痩けている。
「隆夫?隆夫か本当に、どうしたんだ一体」
以前とは似ても似つかない弟の姿に、それ以上の問いかけができなかった。
「まあ、上がりなよ」
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