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「・・・・・・おじちゃん?」
玄関先に立っていたのは、小学1,2年生くらいの男の子だった。
「ああ、君か。なんでここに」
「おじちゃん!よかった。あのね、やっぱりね、僕のランドセル返してほしいんだ。思い出したんだけど、明日先生に出す宿題がその中に入ってるんだ」
「ランドセル?」
もしや、と思い茂夫は隆夫を見た。
「あ、ああ、悪かったね。そう言えば、車の中だ。行こうか」
隆夫はベンツの助手席から、ランドセルを取り出した。
「はい」
男の子に素っ気なく渡した。
「おじちゃん、ありがとう」
男の子は屈託のない笑顔で、隆夫にお礼を言った。
「おじちゃん、またねー」
千切れんばかりに、手を大振りしてから、走って帰っていった。
『ありがとう』
隆夫は何も感謝されるようなことはしていない。
だが、それを言われた時、突如として隆夫の顔に生気が戻った。
顔は肌色に戻り、頬は痩けたままだったが、何かを取り戻したように笑顔になった。
「お?やっと笑えたな」
茂夫も笑顔になり、肘で隆夫の脇腹を軽く小突いた。
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