サキドリ

14/14
前へ
/14ページ
次へ
ここ最近、極端に笑顔が減っていた。 人から感謝されることも、そう多くはなかった。 久々の『ありがとう』をもらい、隆夫は胸の鼓動を感じることができた。 「ああ、『ありがとう』の使い方、まちがえちゃったな」 隆夫は鼻を啜って空を見上げた。 鷺が気持ちよさそうに、空を泳いでいた。 「よっしゃ。久しぶりにラーメンでも食い行くか」 弟の背中を叩き、促した。 「う、うん!兄さん?」 「なんだ?」 「・・・・・・ありがとう」 「お前っ、それはどっちの意味の『ありがとう』だ!」 「さあね」 2人で追いかけ合うようにして、ベンツに乗り込んだ。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加