サキドリ

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うまくいった。 『ありがとう』 なんと素晴らしい言葉なのだろう。 それだけでランドセルを手に入れた。 別に何かに使う予定はないのだが、隆夫にとっては大きな成果だった。 ランドセルの紐が肩に食い込んできて、少し不快ではあったが、その足で隆夫は街中へ出た。 車が行き交い、人々は忙しなく歩いている。 今年33歳にもなろう大の大人が、ランドセルを背負ってるもんだから、周囲から何事かと注目されていた。 「ありがとうございます」 注目していたうちの1人のおばちゃんに、お礼を言ってみた。 「あ、いえ、ご丁寧にどうも」 露骨に不信感丸出しの顔が一転、柔らかな表情へと変わった。 隆夫も目一杯の笑顔で応えた。 『ありがとう』という言葉に、これほどの効力があるとは全く想像すらしていなかった。 己の意のままになる様に、隆夫は夢中になった。 「あれは」 隆夫は、ドラッグストアの駐車場に止まっている、1台の車に注目した。
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