サキドリ

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「ベンツっ、ベンツっ、ベンツ」 隆夫は有頂天だった。 『ありがとう』だけでこんなにも思い通りにできる。 少しだけ、心苦しさは残るものの、憧れていたベンツを手に入れたことによって、気持ちが紛れていた。 しばらくは、ドライブを楽しんだ。 気温34℃、猛暑日だ。 しかし、車の中はクーラーで快適。 途中、水道管の工事で道が片側通行となっていた。 交通整理の人が、汗を流しながら懸命に旗振りをしていた。 こんな暑い中、大変だな。 おれなんか、一言、それだけで人生上手くいくのに。 彼らが一生懸命に働く姿に、哀れみさえ感じた。 「おっと、もう晩飯時か」 時計の針は6時を刺そうとしていた。 晩ご飯は既に決めていた。
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