サキドリ

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「ご来店ありがとうございます」 丁寧な対応の、清潔感に溢れる店員が隆夫を迎えた。 こじんまりとはしているが、アンティークな雰囲気の小洒落たレストランに足を運んだ。 珍しく予約までしたから、入店から、料理提供まですんなりといった。 前菜から始まり、スープ、魚料理、メインの肉料理そして、お口直しのソルベ。 肉料理は、ナイフを動かすまでもなく、すっと切れた。 極上のフィレ肉なんて、生まれて初めて口にしたかもしれない。 2時間ほど掛けて、十分に堪能した。 「チェックで」 店員に指でバッテンして見せた。 普段であれば、こんな仕草は絶対にしない。 「お会計こちらです」 21,600円か。 「お客様、いかがなさいましたか?」 「ありがとう」 「はい?」 「ありがとう。本当に」 「え?」 「いや、だから、ありがとう。本当に感謝してるんだ」 「あっ、左様でございますか。こちらこそありがとうございました。またお越しください」 少し手間取ったが、順調に事が運んだ。 これほどの満足感が得られたのはいつ振りか、振り返っても出てこない。 幸せな気持ちのまま、ベンツに乗り込んだ。
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