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運転中、妙に眠い。
さっきまで、あれだけ満たされていたのに、どっと疲れが押し寄せた。
早く帰って寝たい。
寝たい。
家・・・・・・。
どうせなら、今の築30数年はいっているであろう家よりも、もっといい家で寝たい。
開放感ある寝室、キングベッド、とまではいかずとも、隙間風がびゅうびゅう吹き込むような環境はもう嫌だ。
更なる欲が隆夫を駆り立てた。
眠たい目を擦って、市街を散策した。
真新しそうな一軒家を見つけ、路上に車を止める。
疲れはピークを迎えそうだったが、もう少し、と身体に鞭を打った。
「ぴんぽーん」
インターホンを押し込む。
「はい」
やや遅れて、家主かその関係者と思しき女性の声がした。
「あ、あの、ありがとうございます。感謝しています」
家から応答があったことに安心し、隆夫はさっそく決まり文句を言った。
「はい?何ですか急に」
「いや、だから本当にありがとうございます。すごく感謝してます」
「いや、そんなこと言われても」
声色からして、家主は困惑しているようだった。
何かがおかしい。
昼間はこんなことなかったのに。
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