サキドリ

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松浦茂夫(まつうらしげお)は、大きく身体を伸ばした。 「終わったあああ」 ここ2年間、仕事で取り組んできたプロジェクトがやっと完結したのだった。 売上見込みも、今のところ良好で言う事なしだった。 この2年間は、家族とまともに連絡すら取っていなかった。 家族と言っても、今や3つ歳の離れた弟だけだが。 茂夫はポケットからスマートフォンを取り出した。 「元気か?変わりないか?」 LINEではあったが、弟に久々の連絡だった。 「そこそこ」 そっけない返事だが、返事が来たことに安心した。 「そっか。今、実家か?」 「いや、別の家」 「家買ったのか⁉︎」 「いや、もらった」 淡々と会話が進んでいく中で、理解が追いつかなかった。 「家をもらった?誰に?」 茂夫と弟は、交友関係がかなり狭いので、弟の知り合いは茂夫の知り合い、ということもざらにある。 一人一人思い浮かべても、茂夫には思い当たる節がなかった。 「さあ」 茂夫は胸騒ぎがした。 「家どこ?仕事終わったら行ってもいい?」 「うん」 最後の返信を既読にすることなく、スマートフォンの画面を眺めていた。
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