2.スプラッシュ

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2.スプラッシュ

宮藤尊は今年10年目のお笑いコンビ・スプラッシュのボケ担当。相方の西本とは養成所で出会ったらしい。 東京ではキャパ30人も入れない小さな劇場で、見たことも聞いたこともない芸人たちが日夜ネタをしている。 その誰もがいつか売れると信じている。尊もその内の1人だ。 「おかえりー。お疲れさん」 「弁当買ってきた。食うだろ」 「食う食う! ありがとな!」 帰宅すると当たり前のように尊が出迎えた。ローテーブルに広げられたネタ帳を片付ける。 高校の頃は俺がネタを書いてたが、西本はネタが書けないので尊が担当してるらしい。 「仕事、ないのかよ」 「探してるんだけど条件に合うバイトがなかなかなくってさ」 「そっちじゃなくて芸人の方。ライブの予定とかねえの?」 「あ、あるある!」 尊がテーブルに置いたスマホを俺の方に滑らせる。 画面には『次世代ブレイク芸人を探せ! ネクストライブ!』とでかい文字で書かれたページが映っていた。その下に芸人たちの顔写真が並んでる。スプラッシュもそこにいた。 「このライブで優勝したら、テレビのネタ番組に出られるんだぜ」 「へえ、そんなんがあるんだ」 ライブは毎月行われ、優勝者は『ネクストナイト!』という新番組に出られるらしい。 「まだチケット取れる? 見に行くよ」 「マジで? ありがとな! チケットまだ全然あるから」 「ちゃんと告知しとけよ。そういうときのSNSだろ」 「よっしゃ! 大輔、拡散よろしく!」 尊の夢への大きなチャンス。 そう考えているのは尊だけではないのだろうが。
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