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「佐々木と申します」
寿さん家にお邪魔して、いっくんの話を聞いた。
いっくんは5年程前ジェイムスが咥えてきたのだという。
のんちゃんのお兄ちゃんのいっくんは、性別こそ違えど双子のようによく似ていた。
「ずーっと前、のんちゃんと離れた。かか様とも」
いっくんのビー玉は桔梗色、やはりお母さんに貰ったらしい。
「ずっと暗い場所にいたらしいのよ、いっくんは」
いっくんもまたのんちゃんのように閉じ込められていたのだろう。
「やっと逃げ出して、人間が怖くてウロウロしていたところにジェイムスが通りかかったみたいでね。さっきみたいに咥えて、ウチに連れてきちゃったの」
いっくんとのんちゃんの頭を、よしよしと撫でた寿さんに二人は顔を見合わせて嬉しそうだ。
「のんちゃん、いっくん、お庭で遊んでいらっしゃい」
縁側の向こうに見える庭、のんちゃんといっくんとジェイムスが追いかけっこ。
その楽しそうな姿を眺めながら。
「佐々木さんにお願いしたいことがありますの」
寿さんのお願い事は、いっくんのことだった。
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