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「いっくんは、ババとジェイムスのとこにいる。どこにも行かない」
庭から戻ったいっくんに寿さんが言ったのは、これからはのんちゃんと二人で俺の家に世話になりなさい、ということだった。
「ババがいい! ババはいっくんにやさしい、閉じ込めたりしない」
「でもね、いっくん。婆ちゃんはこの先何年一緒にいられるかわからないのよ? 佐々木さんだって絶対にいっくんを閉じ込めたりなんかしないわ」
寿さんはいっくんのこの先を心配していた。
自分は後何年生きられるかはわからない、その時にいっくんが一人ぼっちになるのは可哀そうだ。
妹であるのんちゃんと一緒にいっくんも俺の家に住まわせてもらえないか、と頼み込まれて。
その真剣さに承諾はしたものの、今にも泣き出しそうないっくんを見ていたら……。
「のんちゃんはいっくんと一緒がいい?」
コクンと頷くのんちゃんに俺も覚悟を決めた。
「あの、寿さん。のんちゃんをここに住まわせてくれませんか?」
幸いここは俺の家より大きいし、のんちゃんはコスパもいいし、寿さんも優しいみたいだし。
「私は全然構わないですよ、いっくんも喜ぶでしょうし。ただ万が一私に何かあった時には」
「はい、その時にはジェイムスも一緒に俺が面倒見ます」
寿さんと俺はそれで納得した。
のんちゃんといっくんが楽しそうに遊ぶ姿に少しだけ寂しさを感じながら。
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