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ゴクンと生唾を飲み込んで襖に耳を宛てた。
さっきまで露天風呂でポッカポカに温まって、更にアルコールでも火照ってるはずの身体が一気に冷えた気がした。
心臓の音が大きく耳の中で響き、手は震え、鼻から漏れる息が獣みたいにフンフンしているのを自分でも感じている。
つまりは恐怖心だ。
だがしかし、カリカリ音はしばらくすると止んでしまった。
ほんの少し安堵のため息、だよな、そうに決まっている。
「ねずみか?」
独り言ちることで己に言い聞かせて安心させようとした、のだが。
「……、ちゅうちゅう」
……、待て、何か今『ちゅうちゅう』って不気味な声が聞こえたぞ?!
悲鳴を上げそうになるのを必死に堪えて冷や汗を拭う。
さっきのあの『ちゅうちゅう』はまるで小さな子供がねずみの鳴き声を真似ているみたいな……?
まさか、ここに子供が閉じ込められていたり?!
落ち着け、落ち着け、俺!! もしかしたら本物のねずみだって可能性もまだ捨てきれないだろう。
さて、どうするか? 必死に考え出した次なる確認方法は。
「も、もしかしたら、ねずみを追いかけてきた猫だったりもするんだろうか?」
「にゃあにゃあ」
!! なんだこれ!?
「犬かもしれないな」
「わんわんっ」
!!
「アルマジロかもしれない!」
「……あ、あるまじろおおおおお?」
待て、アルマジロはきっとそんな風には鳴かないだろう、俺も知らないけれど。
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