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さすがにこれはおかしい。
どう考えてもこの襖の向こうにいるのは子供だ、子供の声だ。
こんなところに閉じ込められているのはおかしいだろ、犯罪の臭いしかしない。
誘拐されている? 虐待されている?
どっちだ!? どっちだって大罪だ!
「待ってて、今開けるからね!」
大慌てでガムテープを剥がし、開けた先に立っていたのは確かに子供だった。
年の頃は5、6歳?
おかっぱ頭にくりくりとした大きな目、赤い着物姿で手毬を抱きしめて俺をじっと見上げている。
まるで、それは……。
思考能力が追い付かなくなりそうで、一旦処理するために襖をしめた。
次の瞬間、スパンッと音をたて勢いよく向こう側から開いた襖。
やっぱり幻ではなく、あの女の子が出てきて長いこと俺を見上げた後で。
「誰だ?」
……、しゃべった!!
「えっと、……佐々木涼平といいます」
何となく威厳を感じて敬語になってしまった。見た目年齢は絶対俺の方が上なのに、実際はそうじゃない気がして。
「のんちゃん」
「え?」
「のんちゃんだ」
のんちゃん、ってこの子の名前でいいのかな?
「のんちゃん、って、もしかして」
「のんちゃんはのんちゃんだ。ただのか弱い小童妖怪だ」
うわあ!! 本人、妖怪言ってるし! やっぱ、そうじゃんね? のんちゃんは、きっと!
「ざ」
「りょーへーの考えているよーなあやかしではない、断じてだ!」
この時から、のんちゃんはめちゃくちゃ否定をしていた。
だが俺が知っているそんな風貌の妖怪と言えば『ざ 』しかいないのだ。
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