のんちゃんがいます

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 70年ほど前のある日、先々代に雇われた山伏のような僧侶が旅館にやってきてのんちゃんをあの部屋に閉じ込めたそうだ。  調べたところによると、のんちゃんのような妖怪が住む家は繁栄するのだという。  逆に去られると没落するとも。  幸運の(わらべ)である『のんちゃんの存在』を先々代は見えずとも知っていたのだろう。  だからあの部屋にのんちゃんを閉じ込め、未来永劫あの旅館を繁栄させようとしていたのじゃないか。  今となっては憶測でしかないが……。  あの翌日、のんちゃんは東京に帰る俺にくっついてきてしまった。  襖のガムテープは出来る限り元通りにしてはきた。  どうか俺のせいだなんて、バレていませんように!  ひょこひょこと勝手についてきちゃったのんちゃんは、現在俺の家に仮住まい中だ。  東京とはいえ23区外、最寄り駅まで徒歩20分、六畳1LDK築40年のアパート、家賃は破格の4万7千円だ!  そんな安普請にあんな豪華な旅館に住んでいたお嬢様に住んでもらうなんて大変申し訳なかったし。  うちに来たのはただの興味本位で、いずれ旅館に戻るだろう、と思ってたんだけどね? 「どうすんの? のんちゃん。もう帰る場所無くなっちゃったよ?」 「ある、ここがのんちゃんの新しいお家だ」 「は?」 「のんちゃんのお家だ!」  何と返事をしたらいいものやら。
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