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だけど、どうしてのんちゃんは俺なんかについてきたのだろう?
のんちゃんがあの部屋を出ようが出まいが、公園での反応のように誰にも見えないはずだし。
大きな旅館の方が庭もあったし、広くて遊び応えがあっただろうに。
「のんちゃんは、東京に来てみたかったの?」
「違う、りょーへーからちょっとだけ、あにじゃの匂いがしたからだ」
「あにじゃ? え? 兄者? もしかして、のんちゃんにはお兄ちゃんがいるの!?」
コクンと頷いたのんちゃん。
いつも怒っている以外は無表情なのでイマイチよくわからないのだけれど、多分今は哀しい顔をしているようだ。
「もしかして、のんちゃんはお兄ちゃんを探しに来たの?」
「そうだ! りょーへーは知らないか?」
そう言って着物のあわせに手を入れて何かを取り出すと俺の手にのせた。
綺麗な瑠璃色のビー玉だ。
「かか様から貰った宝物だ。これはのんちゃんのだ。りょーへーにやるから、あにじゃを探してほしい」
くりくりの目にいっぱい溜まった涙。
依頼料としては少しばかり重たすぎるそれに苦笑し頭を振った。
「これは貰えないよ、のんちゃんの大切なものでしょ? お礼なんかいらないけど、お兄ちゃん探しはしよう! 会いたくて来たんでしょ?」
おいで、と手を伸ばしたら多分笑ってくれたみたいだった。
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