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俺に匂いがついていた、というのだからもしかして知り合いの家に?
まずは近所を捜索しようと、のんちゃんと歩き出す。
「お兄ちゃんの匂いはその時だけ?」
「そうだ、こっちに来てからは匂いがしない」
となると3か月以上会っていない誰かのところに?
誰だ? 対象が多すぎる。
「りょーへーはのんちゃんを閉じ込めないと思った」
「え?」
「りょーへーは大丈夫だと、のんちゃんは思ったから来た」
あ! もしかして俺についてきた理由!?
歩みを止めたのんちゃんは俺の顔を見上げて、口角をあげた。
……笑ってる、よな? 俺のこと、信用してくれてるんだ。
どうしよう、可愛いぞ。
そっと手を伸ばして頭を撫でたら、のんちゃんはくりくり目で撫でられるまま。
妖怪とはいえ幼い女の子だ。
一人ぼっちであんな暗い場所に70年も閉じ込められて、きっとずっと心細かったに違いない。
「りょーへー」
不意に鼻をヒクヒクさせたのんちゃんが急に走り出す。
「どうした? のんちゃん!」
「あにじゃの匂いがする! こっちだ、りょーへー!」
のんちゃんとお兄ちゃんとの対面?!
必死に駆けるのんちゃんの後ろ姿に、こみ上げてくるものがあって目頭が熱くなった。
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