虚像

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うちに得体のしれない何かがいる。 ふとした時に現れる醜い姿。 薄汚い姿と鼻が曲がりそうな異臭。 何かの上げる鳴き声が終始耳に響いている。 挙句に、そいつは私に時折触れてくるのだ。 いや、触れるなんて優しいもんじゃない。 痛みを私に与えてくる。 何度も旦那には相談した。 けど、旦那は私を病人扱いしようとする。 旦那に土下座されて私は結婚したのに。 私なりに愛していたのに。 どうしてこんなにも酷く扱われるのか。 酷い目にあっているのは私なのに。 どうして助けてくれないのか。 どうして私をなじるのか。 どうして私に手を上げるのか。 どうして幸せにしてくれないのか。 旦那はどうしてあんなに変わってしまったのだろう。 むしろ、あれは本当に旦那だろうか? あんなに愛をささやいてくれた人と同じとは思えない。 ひょっとして、旦那も化け物なのかも。 ……そうだ。 化け物なんだ。 旦那はとっくに死んでいて、化け物がこの家を乗っ取ろうとしているんだ。 ということは、あの得体のしれない何かは、私を殺して入れ替わろうとしている? まだ小さいけど、私を食べて大きくなるのね。 そんなことさせるもんか。 私は……私は負けない。 化け物にこの家を明け渡したりしない。 私とあの人の家は、私が守らなきゃ。 あの人はいなくても、私と旦那の思い出はずっとこの家にあるのだから。 勝てるかな、私で。 いや、勝つんだ。 お願い、力を貸してあなた……。 あの化け物どもからこの家を守る力を私にちょうだい。
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