想いは遠く、カムチャッカ

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 少し連呼してみる。  オレンジ・ペコー。  オレンジ・ペコー。  セカンド・フラッシュ。  オレンジ・ペコー。  こいつは良い。貴族的な響きを感じる。もしくは歴戦の競走馬の名に連なっていてもおかしくはない雰囲気。名前だけで有馬記念に呼ばれるはずだ。たぶん血筋はそこまで良くなくて産まれた当初は期待されていなかったけど、走らせてみたら驚異の末脚を発揮してたまたま通り掛かった老調教師に見出だされるタイプの奴だ。ワクワクしてきた。  部屋にオレンジ・ペコー(セカンド・フラッシュ)を運び入れ、ニンマリしながら啜る。  旨い。やはり紅茶はオレンジ・ペコー(セカンド・フラッシュ)が一番だ。オレンジ・ペコー以外で取れた紅茶などただの模造品に過ぎない。流石は紅茶の本場、オレンジ・ペコー。  でもオレンジ・ペコー(セカンド・フラッシュ)が一体何なのかよくわからなかったので、インターネットで調べてみた。  茶葉の部位と収穫した時期らしい。  てっきり紅茶の名前は全部産地の名前だと思っていたので、さっき『紅茶の本場、オレンジ・ペコー』とか心の中で呟いてしまった。冷静に考えたらそんなメルヘンな地名がこの殺伐とした現代社会にあるはずがない。また恥ずかしくなってきた。  となるともうオレンジ・ペコー(セカンド・フラッシュ)には何の興味もない。僕に恥をかかせた紅茶など、幸せのために摂る、という嗜好品の定義に反する。幸せになりたいのであれば、紅茶など飲まなくとも甘い物でも口に放り込んでおけば良いのだ。  そう思うと何か甘い物を食べたくて仕方がなくなってきた。僕はインターネットで『甘い物』と検索した。暫く眺め、1つの単語で僕の意識は引っ掛かる。  クイニーアマン  ……なんて甘美な響きの言葉だろうか。
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