想いは遠く、カムチャッカ

　言葉に出して言ってみる。

　クイニーアマン。
　クイニーアマン。
　クイニーアマン。

　ヤバいなこれは。クイニーアマンが一体どんなものかはわからないが、何かカッコいいロボットとかの名前だろうか。クイニーアマンの前に適当な四字熟語を付けておけば2クール位のロボットアニメが作れそうだ。宇宙戦士クイニーアマン。無双鉄人クイニーアマン。これは強い。きっと勧善懲悪を基本としつつもきっちりと敵側のドラマまで描いて一概にどちらが悪とも取れず敵の美形幹部に女性ファンが多数付くタイプの奴だ。ワクワクしてきた。

　それにしてもクイニーアマンと連呼していたら、食べてもいないのに口の中が甘くなってきた。これはヤバい奴だ。クイニーアマンこそ神が禁じた禁断の果実なのかもしれない。
　……いやたぶん果実じゃない。デザートだ。水菓子ではない。僕は頭の中で訂正する。もう僕は恥をかきたくない。恥をかいて、クイニーアマンを嫌いになりたくはない。それにしても語感が良い。間違いなく声に出して言いたい日本語のトップランカーだと思う。
　……いやたぶん日本語じゃない。頭の中で慌てて訂正する。同じ轍は踏まない。これは洋菓子だ。断じて日本語ではない。そんなつまらない思い込みで僕からクイニーアマンを奪わないでほしい。危なかった。

　もはや僕の頭の中はクイニーアマンで一杯だ。どこで売っているんだろう。インターネットで少し調べてみた。

　洋菓子店、またはパン屋で売っているらしい。

　……パン屋？

　パンなのか？クイニーアマンって。
　もう少し調べたら画像も出てきた。クロワッサンを丸くしてより甘くしたものだろうか？

　さっき『デザート』とか頭の中で呟いてしまった。確かにアップルパイとかもパン屋で売っているが、パン屋で売っている以上、それは菓子パンの範疇だし、食事として転化できる。食事として食べられるものであれば、デザートとは一概に言えない。また恥ずかしくなってきた。

　となるともうクイニーアマンに対しての興味は失せる。僕に恥をかかせた菓子パンなどに僕を幸せにする技量は無い。それによく考えたら別に甘い物が特段好きというわけではなかった。腹を満たしたいのであれば甘い物ではなくしっかりとした食事をきっちりと摂ったほうが体にも良い。甘い物の摂り過ぎは体に悪い。体に良いか悪いかで言えば、当然良いものが良い。僕だって健康を気にする。

　そう思って僕は『健康法』とインターネット検索をした。
　目が止まる。

　リフレクソロジー

　……なんと優美な響きの言葉か。