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ある日、せんせいはどうとくの授業をしました。ありがとう、を返そう!そう書かれた黒板の字はとってもキレイです。
「みんなは人にありがとうを言われたらどうするかな?」
せんせいは、ほほえんでみんなの顔を眺めます。みんなは何も言いません。せんせいの言葉なんてだれも聞きません。
せんせいの目はまたしょぼしょぼとまばたきを始めました。
「そう、ありがとうを返さなきゃいけませんね!普段ありがとうと言ってくれる人が何かしてくれたらみんなもありがとうと言いましょう!」
ふるえた声がかわいそうでたまりません。ぼくはせんせいを見て「はい!」と声をあげました。せんせいは小声でありがとうとつぶやきました。
せんせいにありがとうを返さなきゃいけない。ぼくはそう思って授業中ずっと考えていました。どうやってありがとうの気持ちを伝えたらいいんだろうって。
そうだ!お母さんに聞けばいいんだ!
いつもお父さんはお母さんをなぐった後にありがとうと言います。あんなにお母さんはありがとうと言われてるんだからありがとうの返し方も知っているはずです!
家に帰ってぼくはお母さんに聞きました。
「ぼく、ありがとうを返したい!お母さんはどうやってありがとうを返してるの?」
あざだらけのお母さんの顔がひきつっていました。お母さんの手がけいれんします。
「今からね......お母さんはお父さんにありがとうを返すから......かいくん見ててね......」
そう言ってお母さんはぼくにありがとうの返し方を教えてくれました。お母さんがこんなに親切なのは初めてでした。
ぼくは決めました。せんせいにありがとうを返そうと。
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