一人っ子なのに末っ子になりました【川喜田吏美】

6/12
734人が本棚に入れています
本棚に追加
/52ページ
結局・・・ 答えも出ないまま四時の小休憩に屋上まで来た 九月の下旬なのに日差しが強すぎて 諦めて帰ろうとした背中に声がかかった 「休憩か」 「・・・・・・そうよ」 病衣のまま隣に立っているだけなのに この人の纏う空気は変わらず強くて重い 「歩いてきたの?」 「あぁ」 「リハビリにはちょうど良いわ」 背の高い彼を見上げるだけで首が疲れるし眩しい それに気付いたのか 太陽とは逆に立ち直して 視線を下げられるように距離を取った ・・・案外良い人かもしれない クスッと笑うと 「なにがおかしい?」 手摺りに乗せた手が伸びてきて 私の頭を撫でた 「・・・っ」 何?・・・なんで? フワリと笑って頭を撫でた ただ、それだけで 息が詰まるほど胸が苦しい 切長の瞳に囚われて動けない身体は 尋常じゃないくらい火照っていて 師長に言われた『恋』が頭に飛び込んできた 刹那 ポケットに入れていた電話が鳴った 「はい川喜田」 (ごめん、確認したいことがあるの) 「直ぐ戻ります」 師長の呼び出しにホッとしている自分を誤魔化すように 「リハビリ頑張って」 逃げるように彼に背を向けた 小走りになる背中には 彼の視線が強く感じられて 入り口に立つ厳つい面々の横をすり抜けると 漸く息が吐き出せた気がした
/52ページ

最初のコメントを投稿しよう!