ウチにえみちゃんは居ます。

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トゥルルルルルルル トゥルルルルルルル トゥルルルルルルル 電話は鳴り続けるが、荻沼夫婦はそれを無視し続けた。 午前4時32分いつもと同じ時間だ。 番号通知は非通知——。 電話は自動で留守電に切り替わる。 『ただいま留守にしております。ご用の方はメッセージをお残しください』 「ウチにえみちゃんは居ます。えみちゃんを迎えに来てください」 そうとだけ告げると、電話は切れた。 これが一ヶ月続いている。 「警察に届けましょうよ?」 妻の直美はやつれた顔で言った。 「悪い悪戯だよ。もう5年経つんだ」 夫の(たける)は優しくそう言って、肩を抱く。 「だったら、尚更許せない。悪戯でして良い事じゃない!」 「明日の朝、もう一度掛かって来たら、その時は警察に行こう」
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