0人が本棚に入れています
本棚に追加
/44ページ
恋する虫ケラ
勘違いしている人が多いようなので、初めに明らかにしておきたい。
人類は自分たち以外の動物を愛する生き物だが、なにも他の生物に興味や愛情を感じているのは人類に限ったことではない。
どうやら人類は地球を支配し、人類以外の生きものに情と愛を分け与える義務があると勝手に思い込んでいるようだが、正解なようでいて本当は少し違う。
私は虫ケラであるが恋をしている。しかも人間に。
そんなことを想像できる人類など存在するだろうか?
自分は虫ケラに愛されている……。
多分そんな想像を本気でする人間は存在しないだろうし、存在したら少し頭がおかしい奴と捉えられ、人間の中では弱者に扱われてしまうことだろう。
私に名前などない。ただそれだと面倒だから、ダンゴとでもしておこう。
全身は縦に長くその裏側に足がたくさん。刺激を受けると丸くなる虫が私である。敵から身を守って生きながらえる、仲間は多いが、私の周囲の連中の多くは人間に恋をしているのだから笑える。
だがそのほとんどは気持ちを伝えられず、本能のまま交尾をして同じ造形の子孫を作って生涯を終える。
最初のコメントを投稿しよう!