一章

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一章

水原市華が殺された。 その情報は学校中で一斉に公開された。  「えー、今日は大切な連絡があります」 SHRの時間。先生が重々しく切り出した。 どうせまた誰かが喧嘩したんでしょう。水谷小國(みずたに おぐに)は重いまぶたと必死に戦っていた。 そんな話より後ろの席の市華が休みの理由を知りたい。 市華は小國が知る限り休んだことがない。 風邪だったらお見舞いに行こう。市華の好きなシュークリームを持って。 「水谷のことでみんなに言っておかないといけないことがある」 あ、なんだ市華のことか。でも大切な連絡ってことは入院とか? 先生の言葉に小國は振り返る。 ー昨日は元気そうだったけどーどうしたんだろー何かあった?ー なかなか先を言わない先生に5組の生徒はざわつき始める。 前へと視線を戻した時、小國は、はっとした。 先生が泣いている。涙を流している。 騒がしかった教室もやがて静まり返った。まるで水を売ったかのように。 「水原さんが昨日の夜、亡くなりました。」 ーーーーーーーーえ? 小國は、5組の生徒は固まった。若い女の副担任の先生もしゃくり上げている。 桜葉中学校の生徒は、信じられずにただ呆然としている人泣き出す人、叫びだす人であふれかえった。そんな中、1人の生徒がポツリとつぶやく。 「水原市華は殺された」
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