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一章 <3>
水原市華が殺された。
そのニュースは半日遅れで夏桜まで届いた。
桜葉、冬桜のパニックを知り、学園側が隠そうとした。
だが、四校をつなぐ掲示板サイトに桜葉、冬桜、秋桜の生徒が書き込み、夏桜にも知れ渡ることになった。
夏桜はお嬢様学校として有名な私立中学である。
なので有名会社の一人息子や、人気者女優の娘などか在籍している。
警察のトップ警視総監の娘、聖有彩(ひじり ありさ)も。
「ひじり、なんでそんなに落ち着いてるん?あの市華ちゃんが殺されてんで!!」
関西弁で話す有彩の親友、高見沢緋凪(たかみざわ ひな)が飛び跳ねる。
「あー、ひな。うん。ほら、うちあれだからさ。知ってたのよ。」
偶然、父、警視総監の話がきこえたのだ。そのせいか有彩は朝から心ここにあらずというような雰囲気だった。
「あーね!そやからか!なんかひじり、朝から変やなって思っとったけどそれかぁ。」
「ええ、まあ、パニックになるだろうとは思っていたけのだけれど。学園側が隠せばその方がみんな騒ぐわよ。ほんと。」
「ほんまひじりは頭いいこと言うよなー。うち、ひじりのそーゆーとこすきやわ!」
「でも、少し気になるのよ。」
有彩は真剣な表情で考え込む。
いつもの花のような笑顔とは全くかけ離れている。
「え?何が気になるん?」
緋凪はキョトンとしている。有彩は前髪を撫でる。有彩が考え事をしている時の癖だ。
「殺されたって言う情報はどこから出てきたのかっていうこと。桜葉でも秋桜でも冬桜でも『亡くなった』って言われたはずよ。それがなぜここに伝わってきた時『殺された』になっているのかしら。」
有彩がそう言った時、担任が入ってきた。
「えー、席に着くように。五限目を始める前に重要な連絡がある。」
騒がしかった教室は静まり返った。重要な連絡、それはきっと水原市華のことだろう。
「みんなも、もう知っていると思うが、」
そこで先生は大きく息をついた。
「桜葉中学校の水原市華さんが亡くなった。」
すると教室の後ろから声が上がった。
「センセー、それさあ、」
問題児といわれている響鏡花(ひびき きょうか)がピアスをガチャガチャいわせながら机に手をつき立ち上がった。
担任の先生の顔が引きつる。
鏡花は真っ赤な唇のはしをめくって笑う。
「水原市華が殺された、でしょ?」
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