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一章 <4>
水原市華が殺された。
秋桜にもそのニュースは伝わってきた。
秋桜は基本、何からなんでも自由な校風だ。服装も髪の色も登校する日も、登校の有無も。
週に2回以上授業を受ければそれでいい。なので、横のつながりが限りなく薄い。が、それでもいるのだ。目立つ奴らが。男子はそうでもないが女子はスクールカーストのお手本のようになっている。
そんな秋桜でも水原市華は有名で人気だった。
「もも!やばいやばい、マジでやばいって!」
SHRが始まる前、波月桃菜(なみつき ももな)に駆け寄ってきたのは、桃菜と同じクラスで親友の阪夢まどか(さかむ まどか)。
綺麗な黒髪をなびかせ猫目がちの目を見開いている。
「まどっちぃ、どうしたの?」
ふわふわなボブカットを指にくるくる巻きつけて、ふんわり聞くのは紅水城栞(あかみずき しおり)。真面目ないい子だ。
「あのさ、桜葉中学校の水原って子いるじゃん?」
桃菜と栞はうなずいた。噂が広がりにくい学校なのだが、あまりの人気に市華の名前はほとんど全員知っていた。
「あの子がさ、」
「おはよ、3人とも」
まどかが息を吸い込んだ時、クラスメイトの桐谷夕夜(きりたに ゆうや)が声をかけてきた。
「なんだ、ゆーやか。おはよ」
「おはよう、ゆうやくん」
「…おはよ」
まどか、栞、桃菜はそれぞれ挨拶すると夕夜はひらひら手を振った。
「ほら、やっぱももがいたらゆーやのやつ声かけんじゃん。ゆーや、もものこと好きなんだって!これ絶対だわ〜。まどか様の目は誤魔化せないから〜!」
まどかはニタニタ笑いながら桃菜の背中を突く。
栞もうなずいている。
別に悪い気分ではない。
夕夜くんは頭もいいしかっこいいけど…
「〜、そうかなぁ」
正直、友達としか思ってないんだよな。
桃菜は心の中でため息をつく。
「んー。でもあれだな、亜美が怖いな。うん。」
亜美、古海亜美(ふるみ あみ)。この学校のスクールカーストの頂点に君臨する3人のトップの内の1人である。
そんな亜美は夕夜のことが好きらしい。
全く持って興味がない。てゆうか、めんどくさ。
桃菜はため息をついた。
「亜美ねぇ。ところでまどっち、さっき何言いかけたの?」
話題を変えるためにまどかに話をふる。
まどかははっとし、目を泳がせる。
「まどっち?だいしょうぶ?」
栞が心配そうにまどかの顔をのぞきのむ。
まどかはふっと顔を上げてささやいた。
「水原市華が、殺された」
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