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皆さんにお伝えしたいこと。
ーーー命、だいじです。
どうか日々健康な生活習慣を心がけてください。
それでも万が一があるのが人生。その時に自分や家族の命とくらしを守るためにあるのが、生命保険というものです。
困った時は助け合い。だから、いざという時のためにちゃんと保険には加入しておいてね!
できれば我が社の保険に! そしてわたしに声をかけてくれると、契約成績がまた上がr
何でもないです。
ーーーとにかく儲けはアレだけど、最終的に皆さんの命を守るのがわたしたち保険営業の目的な訳なんですよ!
そのわたしがどうして今、人様の命を簡単に奪うような存在に成り果てているんだろう。
呆然とした、その時だった。
「ッッッ、離せぇーーー!」
「黙れ! 伯爵様の命だぞ、大人しくしろ!」
「お嬢様のお命を狙うなんて恐ろしいッ」
外からガヤガヤと人が騒ぐ音。
怒鳴る声、怯えたような声が聴こえて来る。
「……何? 何だか騒がしいわね?」
「……あ、あの声はッッッ」
わたしが未だギクシャクする身体を起こして、ベッドから降りようとすると。
ニムレーは慌てて窓に駆け寄ると、両開きのそこを勢いよく開けた。
「ーーーニムノス!」
「……母さん! ごめん、本当にごめん!」
声が聞こえて来る位置からすると、どうやらここは二階のようだ。
慌てて床の部屋履きに足を突っ込み、フラフラしながら窓に駆け寄る。
「貴様、暴れるな! 罪人の分際で家族に別れを告げられると思うな!」
「俺は殺されてもいいから! 頼むから母さんにだけは、絶対に危害を加えないd」
「やめなさーーーい!!!」
窓から飛び降りんばかりに身を乗り出して、半泣きのニムレーを吹っ飛ばす勢いで窓に割り込む。
ちょっと乱暴でしたね。お嬢様にあるまじき振る舞いだったかしら。
でも、だけど。人生には優先順位ってものがあってだな!
「彼の……ニムノスの処刑は中止です! 中止! 殺しちゃダメ! わたしはちゃんと生きてるから……」
記憶、記憶。『わたし』よ、きちんと思い出せ。
「わたしーーーいえ、わたくしはアリステラ・リデル・カインドリー。カインドリー伯爵家の長女として命じます! 彼の命を奪うことは絶対に許しません!」
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