不器用な男たち

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「こんばんは、すいませーん。誰もいないんですかー?」  お客さんの声がし、店長の力が緩んだ。私は急いでバックを掴むと事務所から出た。 「あ」  レジの前にいたのはミツルだった。いつもと同じ仏頂面だった。そこへ不機嫌そうな顔で奥から店長が出てきた。 「いらっしゃいませお待たせしましたー。え? ルナちゃんの知り合い?」 「……学校の」 「ルナは俺の彼女です。遅いから迎えに来ました」 「あ、そう。ルナちゃん良かったね。お疲れ様」  店長は素っ気なく奥へと入って行った。 「帰るぞ」 「うん」  ミツルの自転車の荷台に無言でまたがる。ミツルも無言で自転車を漕ぎ始める。今日もミツルの運転は乱暴だ。でも、ミツルの背中はあったかかった。温もりに顔を埋めていたら変な緊張感が和らいだ。 「おい、着いたぞ」 「え、あ」  いつの間にか家の前にいた。 「早く降りろ」  何故か今日はミツルから離れたく無かったので私はミツルの背中に顔を埋めたままでいた。
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