不器用な男たち

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「やっぱりルナちゃんみたいに可愛い子入れて正解だったな〜」  店長は30過ぎの妻帯者で私から見ればオジサンだ。だから若い私を子どものように可愛いと思ってくれているのだろう。と思っていたが。 「お、今日はルナちゃんの日か。ラッキーだ」 「ルナちゃんは素直で可愛いねぇ」  お客さんからもそう言われる。まあそう言うのはお爺ちゃんお婆ちゃんのお客さんばかりだけど。  それでもそう言われれば悪い気はしない。私って実は可愛いのかもしれない、若い人には私の魅力は分からないだけで人生経験のある大人から見たら"イイ女"なのかもしれない。なんてちょっと図に乗ってみたりして。 「ルナちゃんは気が利くし優しくて助かるよ。ありがとう」  毎日店長にそう言われるとますますやる気も出て来て張り切ってしまう。私って褒められて伸びるタイプなんだと今更ながら自覚した。   「おい、何で昨日電話に出なかったんだ?」 「バイトだって言ったじゃん」 「何でバイトなんかしてるんだ? どうせミスばっかりして迷惑かけてるんだろ? すぐに辞めろ!」  ミツルにそう言われると何も言えなくなってしまう。そんな事無いよ、バイトでは褒められてばっかだよって言い返す事も出来ない。  ミツルといるとどんどん卑屈な人間になって行く。自信が無くなっていく。一緒にいても辛いだけだ。恋愛ってもっと楽しいものだと思っていた。恋すると女の子は綺麗になって行くものだと思っていた。  でも、鏡に映る私の顔は暗くて生気が無くて惨めなものだ。こんな私と付き合おうなんて奇特な人はミツルしかいないんだろうな。
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