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「ルナちゃん、今日残業してもらえないかなぁ」
「明日休みだし、いいですよ」
仕事も覚えお客さんとも顔見知りになり、最近バイトが楽しくなって来た。学校で笑えない代わりに店では笑顔でいられる。私のオアシスだ。
「ごめんね、ありがとう」
私にオジサン趣味は無いけれど、店長は年の割に若く見えるし笑顔が素敵だ。年下のバイトの私にもフレンドリーに話し掛けてくれるし、何より「ありがとう」と言ってくれる。ミツルとは大違いだ。
ミツルはバレンタインにプレゼントをしてもさも当然と言った顔で受け取り「ダサい色だな」と文句を言った。嘘でも「ありがとう」と言って欲しかった。デートにお弁当を作って行っても「焦げてる」「味薄い」とかしか言わない。
店長はゴミを拾っただけで「ありがとう」、商品を並べただけで「ありがとう」。終いには出勤しただけで「ありがとう」と言ってくれる。
これが大人の余裕と言うものなのだろうか。それとも店長は特別優しい人なのだろうか。どっちにしても私はミツルといる時よりも店長といる時の方が楽しい。心から笑える。
そう言えばミツルから「好き」と言われた事が無い。付き合うきっかけは「今日から俺と付き合え」だったっけ。一体ミツルは何のつもりで私を彼女にしたのだろうか。虐めても反論出来ない子だったら誰でも良かったのだろうか。
私はミツルに憧れていた。カッコ良くて頭が良くてスポーツも出来る。引っ込み思案な私を引っ張って行ってくれそうな人だなぁって思っていた。でも私はミツルを好きなのだろうか。
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