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「どうしたの? 眠いのかな?」
「え、あ! すみません!」
お客さんがいなくて暇だったのでつい考え事をしてしまった。
「無理に残業させちゃったからね、ごめんね」
「いえ、すみません、ボーっとしちゃって」
「彼氏の事でも考えてたのかな?」
「いえ……!」
やっぱり大人はすぐに見抜くんだ。
「羨ましいな。僕がもっと若くて結婚してなかったら、絶対ルナちゃんを彼女にするんだけどな」
「え……」
「だってルナちゃん、凄く可愛いから」
いつもの冗談かと思って店長の顔を見ると、笑っていなかった。真剣な目で私を見つめている。視線を外したくても外し方が分からない。鼓動は激しくなるし顔は熱くなるし、何故だが涙が出そうになるし。
どうしていいのか分からないまま店長と見つめ合っていた。息をするのも忘れていた。時間が止まってしまったのかと思った。
「いらっしゃいませ」
突然店長が視線を外した。お客さんが来たようだ。やっと解放されホッとしたが、まだ心臓はドキドキしている。お客さんが商品を持ってレジに来たので慌てて接客するが「アリガトウゴザイマシタ〜」って上ずった変な声が出てしまった。
その後店長は普段通りに私に対応した。私も平静を装っていつも通りに接した。
「時間だね。今日はありがとう。お疲れ様」
いつもの笑顔で店長は言った。ふわふわした気持ちで私は店を出た。
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