不器用な男たち

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 そう答えるとは思っていなかった。あげるはいいがスプーンは1つしかない。私が口を付けたスプーンじゃ申し訳ない。レジから新しいスプーンを持ってこようと席を立った私に、店長は自分の口を指差した。店長は私を見つめながら口を開けた。  視線の魔法に掛かった私はムースをすくい、震える手でスプーンを店長の口元まで運んだ。店長は私の手ごとスプーンを握りムースを口に入れた。そして私を見つめながらゆっくりと咀嚼した。 「美味しいね」  そう言いながらも店長は視線を逸らさなかった。そして私も逸らせなかった。 「どうしたの? 食べないの?」 「え……食べます……。でも、手が……」  私の手はまだ店長に握られたままだった。 「僕が食べさせてあげようか?」 「え?」  店長は私の手からスプーンを取り、ムースをすくう。 「はい、あ〜んして」
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