罪の在り処

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父と母はちょうど出かけている。今、この家には私と祖母しかいないはず……にも関わらず、先ほどから隣の母の部屋から物音がする。祖母はだいたい一階の居間にいて、二階に上がってくることは滅多にない。 最近、近所で不審者の目撃情報もでている。それに父と母が出かけた後、戸締まりもしなかった。いつもそうしている。 きっと泥棒のしわざに違いない。思わず手が震えた。 私は深呼吸した。心配はいらない。私には祖母がくれた防犯ブザーがある。祖母は私のことは大好きなのだ。 私は大きく空気を吸い込んだ。 「おばあちゃん、助けて」 自分がこんな大きな声を出せることを初めて知った。 防犯ブザーを鳴らして、階段へ向かって投げた。急いでドアを閉めると、あらかじめ入口近くに準備しておいた棚でドアを塞いだ。 私の名を呼ぶ祖母の騒々しい足音に、もうひとつの足音が重なる。 次の瞬間、ガタガタと何かが階段から転がり落ちる音が聞こえた。 泥棒と鉢合わせしてはかなわない。私は10分ほど経ってから、先ほどドアを塞いだ棚を避け、おそるおそる自室を出た。未だ防犯ブザーだけが鳴り喚いている。 廊下の吹き抜け部分から階下を見下ろすと、10分も待ったというのにそこには見知らぬ男が立ち尽くしていた。 男の足元には頭から血を流す祖母が転がっている。 うっかり私の口から声が漏れてしまい、男がこちらを見上げた。男は私の顔を見て、震えだした。 私はこの家の住人だ。 私が怯えるのならともかく、なぜこの男の方が怯えるのか理解できない。 さて、通報でもするか。 「おまわりさん、うちに殺人犯がいます」
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