フリー素材、織田信長

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 翌日も敏行は仕事であった。得意先(クライアント)から仕様変更を唐突に通告され徹夜作業を要求され宿泊業務が決定してしまった。敏行は「ノッブ、寂しがってないかな?」と信長を心配しながらキーボードを叩きプログラムを走らせる。天辺を回り、丑三つ時を過ぎる時には周りは死屍累々、椅子を複数組み合わせて死んだように眠るものばかりになっていた。眠るものも賽の河原の獄卒を思わせる上司の怒りを受けて叩き起こされて、キーボードを叩く仕事に戻る。 「過労死…… しちまうよ」と、敏行の隣に座る同僚が虚ろな目をしながら言う。そして、目薬を指し疲れた目を癒やす。そして愚痴に入る。 「人をなんだと思ってるんだ、あれじゃあ織田信長だよ。ブラック織田家と変わらねぇよ」 敏行はそれを聞いて苦笑いを浮かべた。そして口を開いた。 「違いは直接殺されるか、労働に殺されるかぐらいじゃないの?」 「信長に殺されるのも嫌だな。直接殺しに来るパワハラ上司だろ?」 「ノッブ…… いや、信長はキツイけど部下思いの良い人よ。そして、案外寂しがりやで可愛いところもあるかも」 「おい、何を知ったようなこと言ってるんだ」 「知ってるよ。うちに織田信長いるからね」                             おわり
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