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それを唯一、父さんだけがあらわにしてくれたんだ。
生きる=罪。みたいな、貧困で残酷なご時世の中で。
たったひとり、抗おうとしていたんだ。
同じように翔にも抗って欲しかった。生きようとして欲しかった。たとえ、父子家庭だろうが。なんだろうが。
父さんだって出陣は足や腕でも折っちゃえば、行かなくて済んだのに。まだここに生きていられたのに。そのことに気づいたのは征った後で、手遅れさながらであった。
悔しい、虚しい、切ない。
あまたの感情が入り乱れ、渦を巻いていく。津波が来て、深海の底の底に沈まされたような錯覚が押し寄せてきた。
そしてついにはあの夜も今宵も涙に明け暮れたのであった。
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