空に祈る少女

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赤木に雲泥の差を見せつけられても。 やめよう。 そういう気にはならなかった。 ところが、高1の夏、事件は起こる。 インターハイに出場した僕らは、先輩達と赤木の活躍により、準決勝まで駒を進めていた。 無論、ベンチの僕は顧問と監督の3人で、応援やサポートに尽くしていた。 ピンチヒッターに呼ばれるなんてこともなく、平凡だった。 迎えた準決勝。僕らは、強豪校の心葉高校と当たってしまった。なんと県のベスト2だ。 それに比べ、僕らはベスト10。勝利なんて夢のまた夢だと、承知しての戦いだった。 その割にはほぼ互角と呼べるほどの接戦。どちらも点を譲ろうとはせず、緊迫した雰囲気に包まれていた。僕なんかが、入る隙間もないくらいに。 なのに…………。 2セット目後半、監督は僕を呼んだ。 きっと試合をなんとか動かして、更なる旋風を巻き起こしたかったのだろう。 ベスト10から4に進出できただけでも、奇跡なはずなのに、これ以上を目指そうとするなんて。熱い、熱すぎる監督だ。 下手なやつでも構わない。どうか、チームに勝利の兆しを。せめて一矢の報いを。そんな強き思いが、眼差しから伝わってきた。 覚悟を決める間もなく、コートに立つ。というか、立たされる。あんな呼び方をされたら、いくらバレーの腕に自信がなくても、拒否なんて、できるものか。 先輩からボールがまわされ、手に汗を握りながらサーブを打つ。それはネットをギリギリ超えた後、相手のリベロにレシーブされた。 守備力が高い上に試合中、幾度となくコートを出入りするため、同じチームでもユニフォームが異なっている。ゆえにチームが違ったとしても、一目でリベロの配置がわかるのだ。
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