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「ねぇ、君は?」
「…………」
「この世界のこと、どう思う?」
唐突な質問にまたしても、言葉を失う。まさか聞かれるなんて、思いもしなかった。人生で一度たりとも考えたことがないような、問題の答えを。
口を動かすのに必死になっていた神経を頭にまわす。それをルーレットのように回転させて考える。
そうして、出てきた答えがこれだ。
「優しくはない、かな」
むしろ、天国か地獄かといったら迷わず地獄よりの方だろう。
入学当時、成績は優等生並みだった。どの教科も70点以上で、順位も10位以内。
友達は幼なじみ一人のみ。
つまり、絵に描いたようなとまではいかない。が、苦手なバレー部に所属しながらも、充実した人生を送っていた。
ところが、あるきっかけを境にスランプへ。ここ半年は得意教科の数学を除いて、どれも50点くらい。
最初こそは期待を寄せてくれていた両親には、呆れかえられた。その結果、勉強のやる気さえも、失せてしまった。
その一方で、スポーツは走ることだけが、唯一無二のお気に入りだ。風を直に受ける感覚。ゴールに到達した時の達成感と爽快感。これは何年経とうと、飽きることはないに違いない。
他はというと、どれも苦手分野に属していて、それ同時に致命的に下手でもある。体育の授業で試合なんかやっても活躍はおろか、チームの足を引っ張ってしまう、蛇足な奴だ。
そんな回想に浸っている中、辺りには閑静な沈黙が漂っていた。僕があまりにも、曖昧な返答をしてしまったからだろうか。今更ながら、後悔の波に襲われる。
「私、空野。下の名前は…………千円の千に季節の夏で千夏。君は?」
無言のときを破るように、彼女・千夏は自己紹介をしてきた。
「海原。下の名前は、色の白に澄ました顔で、白澄」
ついさっきの後悔に苛まれながらも、僕は名乗る。それから夏空を仰いでみた。
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