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むしろ、放っておいてほしい。正反対な奴と一緒にいても、自分自身の惨めさを痛感させられるだけ。良いことなんて、ひとつもない。
「関係ねぇだろ?お前には」
やや心配そうな赤木に、ぶっきらぼうに返答しながら踵を返す。それからまた、サーブを打った。
すると今度は、ネットのど真ん中にぶつかって、力なくバウンドしていく。
「まだ、あれから1年しか経ってないんだぜ」
そう。僕の放つサーブがスパイクがネットすらも超えなくなったのは、ちょうど一年前から。
「それを言うなら、一年もだろ」
この欠点はバレー界において、致命的なものに違いない。
しかし、何度も何度もボールを打ったとしても、結果は変わらない。一年経ってもなお、治す術すら明らかになっていない。
「どっちも変わらねぇじゃん」
そう言った赤木はもう一発、サーブを打つ。
それは宝物線を見るまもなく、相手コートに叩きつけられた。
そのずば抜けた迫力に羨望と、自分の実力では到底及びそうにないなと、諦めの気持ちを抱く。
たとえこのスランプが完治しても、それは同じだ。
「なんか試してみたら?競技から離れるとか、基礎練習に戻ってみるとか。スランプの治し方ってそういうものだろ?」
言われてみればそうだ。辞書には一時的な不況と書いてあった。が、一年も続くとは。もはや、深刻化していると、断言せざるを得ない。
なのに未だ、幾度となくサーブを打ち、赤木達のスパイク練習に、レシーブ役として付き合っているだけ。これではさも当然治るわけがない。
「そうだ。一度、原点に戻ってみるのはどうだ?」
良いことを思い付いたように口角を上げながら、赤木は問う。関係ねぇって、さっき突き放したはずなのに。
「原点?」
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