空に祈る少女

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だからひとり息子の僕に夢を託した訳なのだが、あいにく僕は男だ。マネージャーは女がやるイメージが強いし、何より身の丈に合わない。 また、母さんのごとく心臓が弱くもない。すなわち、病弱でもない。当然、入退院の経験だってない。 バレーを心置きなくやっていられる。好きなスポーツではないけれど。 それでも運動ができないよりかはずっとましだ。 ポジションはなぜか、ウイングスパイカー。 訳を聞けば、母さんはいつもこう言う。 「そりゃ単純よ。コートで一番輝いて見えるから」 確かにそれが、エースポジションというものだ。 だがいまいち、実力的にも身長的にも、性格的にも才能的にも、合わない。 その点に関しては、児童期。つまり、始めて間もない頃から気づいていた。 絶対守ってやる。そう意気込んでいた僕は、街のバレースクールにもすすんで通った。 が、僕は恵まれていない存在。 唯一飛び抜けているといえば走る速さくらい。 その他のジャンプ力や判断力、協調性などもろもろ全部が欠けていた。 そのためなのか、バレーを続けてみても、レギュラー入りばかりか、少しの活躍もできない。 その上、あとから入ってきた後輩達には嘲笑われ、バカにされる始末。 そんな局面に、母さんの命令に答えられる自信はすっかり消失してしまった。 それでも、バレーをやめない理由。 1つ、この僕が人からの命令や頼みを見捨てる勇気を持ち合わせていない。 1つ、小学校卒業を機にバレースクールをやめ、中学のバレー部へ入部。それ以来、母さん入退院は見られてない。病弱なのか?と疑いたくなるほどだ。 その現状が、バレーをやる気力に繋がっている。 たとえ、どんなに下手だと知っていても。
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