8-9.キミに捧ぐ

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「いただきます!」  茶谷さんがメインで作ったツナの和風パスタに、私がメインでちぎったり切ったりしたサラダ。向かい合って食べる夕食は、なんだかとっても温かい。 「茶谷さん、パスタ美味しいです」 「こんなん料理に入らない位、簡単だけどな・・」 「料理できる男の人っていいですね。昔からですか?」 「たまに作ることはあったけど、本格的にやるようになったのは、ここ2~3年かな」 「なんか、心境の変化が?」  私が尋ねた言葉に、茶谷さんの手が一瞬止まった。 「ちょうどさ、赤堀が就活してた頃・・退院した彼女にハッキリと『一緒にいたくない』って言われたんだけど。その頃は毎日、料理して何か食べてもらおうって張り切ってたんだよ。すっかり塞ぎこんでて食欲も無かったから、せめて食べ物だけでもって思ってさ」 「健気(けなげ)だったんですね」 「空回りだったけどな」  茶谷さんの、料理にまつわる悲しい話だ。やっぱり、この人は優しい。 「赤堀を助けた時はさ、俺自身が消えてなくなりたい気分で・・。あの日、電車で喧嘩してる奴らがいたのが分かって近寄って見たら、女の子が被害に遭ってて。あんな奴らより、俺の方がマトモに生きてるのになんでだよって、ついキレて」 「それで、私を助けてくれたんですか?」 「だから赤堀に感謝されるようなことじゃねえの。むしゃくしゃして、八つ当たりしたんだよ、喧嘩してる2人に。突き出してスッキリしようと思って」 「それは、正しい行為ですよ」 「だから、鶴が恩返しに来るようなことは、してない」 「してます!」  茶谷さんが、普通の顔して話している。でも、なんでか泣いているように見えた。
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