8-7.扱いにこだわる

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8-7.扱いにこだわる

 茶谷さんの家でリビングの椅子に座ったまま、私は茶谷さんとキスをした。大好きな人だったから、気持ちが通じたらいいなとは思っていた。そして、気持ちが通じ合ったら・・勿論付き合って、こうなることだって分かっていた・・はず・・。  どうしよう、男の人と付き合うのだって、触れ合うのだって、久しぶり過ぎてどうしていいか分からない。私、かなり濃厚なことをされてしまっている。ああ、やっぱり困ります!いきなりディープなやつは!!待って!!  心臓が飛び出そうなほど、ドキドキする。家に着いた途端、これか。なんだか今なら俎板(まないた)の鯉ってやつの気分が分かる気がする。もう・・逃げられないんだろうな・・私、今日・・茶谷さんに・・。  いや待って!ほんと待って!こんなはずではなかったんだって!なんか心の準備が!!できてない!! 「あ、あの茶谷さん・・お付き合い1日目ですよね、私たち」  茶谷さんが離れたので、勇気を持って聞いてみた。今日の覚悟について。 「は?付き合って1日目はデート、キスは何日以降、みたいな、女が言いがちなやつ?」 「元も子もない!」 「付き合い長えし、いいだろ、そういう堅苦しいのは」 「雑!!」 「何?なんか嫌か?」 「そ、それは・・」  嫌ではない。むしろ、茶谷さん以外の人とは絶対に嫌だ。ということはつまり、茶谷さんとは嫌ではないのだろうか。本音では茶谷さんとは・・したいの、かな、私・・。えーでも、なんかこう、雑な感じで流されるの・・。 「今日は仕事だろ。ここでやっててくれていいから。俺は隣の寝室で軽く寝る」 「・・・は???」 「仕事休みだから、午前中は寝る」 「はい・・」  茶谷さん、自由人だもんな・・知ってた。知ってましたとも。はい、お休みなさい。ドキドキして意識しちゃって、勝手にいっぱいいっぱいになっていた私が愚かでした。
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