8-7.扱いにこだわる

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 茶谷さんの家で仕事をしていて気が付いた。飲み物の場所を教えてもらって、食器類も勝手に使って良いと言われてキッチンを漁ったけど、生活の質が男の人のイメージと少しずれる。  私が今使っているマグカップは、あんまり男性が買いそうなデザインではない。ナチュラルな白い陶器で、可愛らしいコロンとした丸いフォルム。女性が選んだんだろうか?なんて過った。考えたくないけど、例の元カノさんと同棲してたんじゃなかろうか。ここ、元・愛の巣だったりするんだろうか。  茶谷さんは私より9つも年上だし、要所要所で聞こえて来る話から相手に困っていない人生を送っていそうだし、過去にどんな恋愛をしていようと構わない、と、ずっと思っていた。でも、現実として女の人の影が目の前にあるっていうのは、どうしてか心地がよいものではない。  リビングで仕事をしていて、ビデオ会議に呼ばれた。私は慌てて、背景を別の風景に合成して参加する。案外どこにいるかバレない仕組みって簡単に作れるな。 「お疲れ様です~」 「お疲れ~。仕事の進捗確認とさ、まあこんな時だから、参って無いかなーって心配しちゃって」 「ありがとうございます、参ってないです」  そんなやり取りをビデオ会議でしていたら、茶谷さんが寝室から出てきて目の前を歩いて行った。トイレにでも起きたのだろうか、反対側を向いて仕事していたら画面に入ってしまったではないか、心臓に悪い。
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