8-9.キミに捧ぐ

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 部屋着以外は、長袖のTシャツを3枚とスウェットのボトムスを1枚。茶谷さんが毎朝走っているというので、週に1回くらいは付き合ってみようと思う。いや、週に1回と言わずに最初の1回だけでいいかもしれない。  服はひとまずこの程度で、通販で茶谷さんの家に届くように買えばいいとして。化粧品や歯ブラシ、洗顔用のヘアバンドやヘアゴム、ヘアアイロンも買った。これから一緒に暮らしますって感じが、滲み出ていそうな気がする。  茶谷さんは私の荷物を全部持ってくれて、やっぱり手を繋いで歩く。あんまり人前で手とか繋ぐ人ではなさそうなのに、そうでもなかったらしい。  夕方の町を後にして茶谷さんの家に帰ることが、なんだかまだ信じられない。 「スーパーで食材買って帰ろうぜ」 「ああ、はい。茶谷さんが作ってくれるんですか?」 「赤堀もやるんだよ。こういうのは一緒にやるもんだろ」 「へえ。なんか意外です。でも、素敵ですね。ちなみに私、全然料理できません」 「まじか」  私たちは、今日はパスタにしようと決めてスーパーで買い物をする。茶谷さんは自炊も楽しいぞと私に言ってたけど、きっと私の部屋に付いたひと口タイプのIHコンロを見たら、絶句すると思う。  その後は、茶谷シェフ指導のもと、私は野菜を切ったりパスタを茹でたり、サラダの野菜を盛り付けたりした。手際なんか全然よくなかったけど、キッチンで隣に立つ茶谷さんに色々教えてもらう。結婚したらこんな感じなのかなと変にニヤニヤしていた私に、茶谷さんは時々軽く触れるタイプのキスをして、また料理に戻る、というのを繰り返した。  どうしよう、心臓が持たない。このまま「その時」がどんどんと近付いて来ているようで、焦る。私は、どうすれば良いんだ・・。
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