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「茶谷さんに助けられて、今、私がここにいることを否定しないでください」
「松味に入社までして、バカだろ・・」
「後悔なんてしてません」
私は、駆け寄って座ったまま少し丸まった茶谷さんを、後ろから抱きしめてみた。大きな男の人の背中なのに、どうしてこんなに頼りなく見えるんだろう。
松味食品のエースのくせに、どんな踏ん張り方をして仕事してるんだろう。
「私、車内トラブルに遭ったのは、茶谷さんに出会うためだったんだと思います」
「ほんと、その無駄に前向きなところ、すげえわ」
「茶谷さん、大抵のことは、『好き』には敵わないんですよ」
「万年フリーが偉そうに言うんじゃねえよ」
「私のこと好きなくせに」
そう言った私に、茶谷さんが強めにキスをする。うわ、なんか激しい、と思った矢先、そのまま席を立った茶谷さんの手がTシャツの中に入って来た。え、ちょっと待って、待って。
「や、茶谷さん、ちょっと!」
「・・何」
「困ります!」
「何が」
「何がじゃないです・・」
茶谷さんも、私が尋常ではない嫌がり方をしたことに気付いていた。私は軽く半泣きだし、茶谷さんは私が拒絶した意味が分からないようだ。そりゃ、泊まるのを了承しておいてこんな態度を取るのは、違うって・・私だって、分かってる。
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