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2020年6月1日―――
「茶谷さん、実は私、茶谷さんに出会った日に夢を見たんです・・。茶谷さんが2020年の5月に亡くなっちゃう夢で」
「へえ、良かった生きてて」
「しかも、自死でした」
「こえーこと言うな。でも・・いっこだけ心当たりあるかも」
隣同士で横になっている時に、夢の話をした。茶谷さんは馬鹿にするかと思ったのに、なぜかすんなり受け入れた。
「赤堀がここに来るまで、実は割と寝不足で・・あんまり熟睡できてなくてさ。一回車で、アクセルとブレーキを踏み間違ったことあんだわ」
「あぶな・・」
「あれをもう一回、大きな道路でやってたら死んでた気がするし、そうなったら自殺の噂をされたんだろーなと思う」
「今は大丈夫なんですか?」
「ああ、寝る前の適度な運動のお陰でよく眠れるし」
「へーそっすか」
私と付き合っていなかったら、茶谷さんは珍しくフリーだったかもしれない。そんな中で毎日お客さんに謝り続けるようなことをやっていたら、自殺だったんじゃないかって疑われる可能性は、大いにある。
でも、それが起こり得たもう一つの可能性だったのかを検証する方法はなく、私の前にある現実は、茶谷さんが生きているという事実だけだ。
私の見た夢は所詮ただの夢だったけど、後悔したくないと思って粘って良かった。思いがけず、茶谷さんの心をもらえた。かけがえのない、大切な人ができた。
「理由はともかく、茶谷さんが生きててよかった」
「かわいいこと言うねえ、赤堀さん」
実は最近、どっちが先に唇を奪えるかでゲームみたいなことになる。ちなみに、今は茶谷さんの勝ち。
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